口腔ケアと乳がん治療【歯科医コラボ動画】
動画ナレーション全文
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目次
00:00 BC Tubeの「乳がん治療と口の関係」に関する動画紹介
今回は主に乳がん治療前の患者さんへのお話です。
メッセージはとてもシンプルで乳がん治療と口の関係についてです。最後まで見ていただくと、乳がん治療と口の関係性、がん治療前に歯科医を受診した方が良い理由を分かっていただけると思います。
00:24 乳がん治療と口の関係
まずは乳がん治療と口の関係です。一見関係がないようにも見えますが、乳がん治療の際に口に関連する副作用が問題になることがあります。
乳がんの治療法は大きく全身治療と局所治療に分かれます。口の症状に関連するのは主に局所治療、すなわち化学療法や分子標的治療です。通常乳がんの対象には含まれませんが、放射線治療も照射野に口やその周辺の組織が含まれると口の中の副作用の原因になります。
全身治療で生じる可能性のある主な口の症状は、口内炎、虫歯や口の中の感染症、味覚異常です。次のスライドから一つずつ説明していきます。
00:57 乳がん治療中の口の症状(副作用)
最も有名な口の中の副作用は、口内炎です。
使用する薬剤の種類にもよりますが口内炎は抗癌剤治療中の患者さんの30-40%程度に生じると考えられています。口内炎の痛みは、普段通りに食事を取ることを難くし、体重の減少にもつながります。また痛みにより歯磨きも難しくなり、口の中を綺麗に保ことが難しくなります。
次にむし歯や口の感染症です。
治療の影響による免疫力の低下、体調不良で歯磨きが十分に行えないなどの影響で、口の中の環境が変化し、虫歯が生じたりや口の中にカビが生えることがあります。口内炎による痛みで歯磨きが十分にできず、口の中を綺麗に保てないことがむし歯やカビが増えることに拍車をかけます。
そして3つめが味覚異常です。
薬剤の中には、舌にある味覚を司る細胞に影響を与えるものもあり、その場合味覚が低下したり失われたりすることがあります。味覚異常は食欲の低下を招き、口内炎による食事時の痛みと相まって、栄養不足を引き起こします。栄養不足はがん治療からの体力の回復を遅らせる原因にもなります。
以上のように、全身治療で生じる可能性のある主な口の症状は、口内炎、虫歯や口の中の感染症、味覚異常です。他にも唾液が少なくなり口腔乾燥症状を呈し、飲み込みが上手くできなくなることがあります。
02:52 副作用を軽減するためにできること
ここまでで乳がん治療と口の関係が理解していただけたかと思います。ではこれら口に生じる副作用を少しでも軽減するためにはどうしたらよいでしょうか。そのうちの一つの方法はがん治療前に歯科医を受診することです。何故歯科医を受診しておくと良いのでしょうか。
理由は簡単でがん治療前に口の中をきれいにしておいた方が良いためです。ここまでに挙げた口に生じる副作用のリスク因子として、口腔衛生状態の不良が挙げられます。つまり口の中がきれいに保てていないとこれらの副作用が生じる頻度が高くなります。
口腔衛生状態が悪いことがなぜリスク因子なのか見てみましょう。例えば口内炎です。そもそも口の中が汚く、細菌が繁殖していること自体が口内炎のリスクと言われています。また虫歯で歯が欠けて鋭くなっていたり、入れ歯や詰め物が綺麗に合っていないとそれらが粘膜を傷つけ口内炎が生じやすくなります。さらにこの状態で全身治療を行えばその副作用により口内炎がより生じやすくなります。反対に考えるとこれらの症状、つまり口腔衛生状態を歯科受診で予め改善しておけば、口内炎の生じるリスクを低下させることができます。それだけではありません。
歯科治療の一部、特に抜歯などの外科処置の中には、乳がん治療の前に終わらせておいた方が良いものもあります。また乳がんの手術の際、揺れている歯があったり歯に鋭い部分があると、麻酔の際に問題になることもあります。つまり、口の中の状態が著しく悪い場合、乳がんの治療事態の開始が遅れてしまう可能性もあります。このようなことを考えると事前に歯科医院を受診してできる治療を終わらせ、口腔内の状態を綺麗に保っておくことが重要です。
04:55 今回のポイント
では最後に今回のまとめのポイントです。
口腔内の状態が悪いと、乳がん治療の際に口に生じる副作用のリスクになることや、乳がん治療の開始が遅れてしまうこがあります。
そのため乳がんの治療をすることが決まったらできるだけ早めに歯科を受診しましょう。
そして、普段から口腔ケアを行い口の中をきれいに保っておきましょう。