がんと骨転移 ~症状・検査編~ 【整形外科医が解説】
動画ナレーション全文
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目次
00:00 はじめに
「乳がんは骨転移が多い」って聞くけど、どんな症状が出るのか?どんな検査をするのか?
今回は、整形外科の先生に解説してもらいます。つぶちゃん
本日は「がんと骨転移、症状・検査編」ということで、お話ししていきます。
がんの骨転移と聞くと、とても怖くて良くないもののように思われるかもしれません。実際のところ、どうなんでしょうか。
がん治療の進歩を背景に、骨転移を正しく理解し向き合うため、がん専門医や整形外科専門医が現在までに分かっていること、確立している検査法や治療法をまとめて、骨転移診療ガイドラインを作っています。
この動画では、ガイドラインの解説、そしてTwitterで事前に皆さんからお寄せいただいたご質問への回答を中心にお送りします。
00:59 本日のメニュー
本日のメニューです。
- がんの骨転移って何?
- 乳がんと骨転移はどんな関係?
- 骨転移の症状は?
- どうやって診断・検査する?
という内容をお話していきます。
また皆さんからいただいた、こちらの質問にお答えします。
- 骨転移による腰痛に特徴は?
- 手術後の骨転移を調べるのに一番有用な検査は?
- レントゲンで異常がないなら、骨転移の心配はない?
- 脚の神経痛で受診するなら乳腺外科?整形外科?
- 複数の骨に転移が同時に起こる?
では本編に参りましょう。
01:37 がんの骨転移って何?
まず、がんの骨転移って何なのでしょうか。
がんの骨転移とは、がん細胞が主に血流を介して骨にたどりつき、骨を壊しながら増えることです。
骨転移が多い骨は、脊椎、骨盤、肋骨、上腕骨、大腿骨で、さらにその中でも大半が体の中心に近い脊椎と骨盤です。
02:02 乳がんと骨転移はどんな関係?
では、乳がんと骨転移にはどんな関係があるのでしょうか。
骨転移が起こる頻度が高いがんは、乳がんがトップで、前立腺がん、肺がん、甲状腺がん、腎がん、と続きます。
また、乳がん患者さんで転移がみつかった方のうち、それが骨転移であった割合は50%以上と報告されており、さらに、術後何年経っても、骨転移が発生することがあります。
乳がんに骨転移が多いということが、乳がん患者さんに骨転移についてよく知っていただきたいと私達が考える理由の一つです。
02:41 骨転移の症状は?
骨転移の症状にはどういったものがあるのでしょうか。骨転移の症状には、
- 骨転移がある部分の痛み、骨折
- 脊椎転移においては神経を圧迫することによる麻痺や神経痛
- 高Ca血症による脱水症状や意識障害
などがあります。このうち、麻痺、高カルシウム血症は、緊急の対処・治療が必要な症状です。
これらの症状は日常生活動作や生活の質に影響を与え、ときにはがんの治療を中止せざるを得ないこともあります。また一方で、骨転移と初めて診断された時、27%から60%は無症状と報告されています。
しかし、腰や背中の痛みは骨転移に限らず経験することがありますね。その中で、骨転移を疑って検査をすべき症状がいくつかあります。
- 体重減少を伴う場合
- 飲み薬や注射が効かない痛み
- 6週間以上続く痛み
- 就寝時・安静時の痛み
- 体重が掛かったり咳をしたりすると悪化する痛み
- 進行する脚の脱力(麻痺)や知覚の異常を伴う場合
です。がんをお持ちで、これらに該当する場合は、詳しい画像検査が必要と考えられます。
04:02 症状に関する皆さんからのご質問
ここで症状について、お寄せいただいたご質問にお答えします。
「骨転移による腰痛と普通の腰痛では違いはありますか?」
「骨転移の痛みの出方や進行の仕方に特徴はありますか?」
ご質問ありがとうございます。
この症状があれば必ず骨転移、この症状なら骨転移は絶対ない、ということはなかなか言えません。しかし、就寝時の痛み、薬が効かない痛み、進行性の長引く痛み、脚の痛み・しびれや麻痺を伴う場合は、骨転移を疑って検査をするのが良いでしょう。
04:40 命に関わる?
さて、転移というと命に関わるような状況を思い浮かべる方もいるかもしれません。骨転移は命に関わるのでしょうか?
現在では、骨転移のみで直ちに命に関わるわけではないと考えられており、がんの種類、他の転移の有無、全身状態など、複合的に考える必要があります。
したがって、骨転移を診断し、治療する目的は、日常生活動作や生活の質を落とさないことであるということです。そして、骨転移の治療により日常生活動作や生活の質を保ちながら、もともとのがんの治療を続けることが、命を守ることにつながると思います。
05:23 どうやって診断(検査)する?
では骨転移はどうやって診断・検査するのでしょうか。
骨転移診断のための検査として、血清Ca、骨代謝マーカーといった血液検査も行いますが、より明確なのは画像検査です。主な画像検査は、
- 骨シンチグラフィ
- PETおよびPET-CT
- MRI
- レントゲン・CT
で、それぞれに特徴があります。各画像検査の特徴を見ていきましょう。
骨シンチグラフィは全身を一度に検査できるため、骨転移を見つける際に有用です。一方で、骨転移ではない部分を異常として検出してしまう「偽陽性」に注意が必要です。
PETおよびPET-CTは全身検査ができる、骨転移以外のがん病巣も調べられるという長所がありますが、検査可能施設が少ないこと、骨シンチグラフィーと同様に偽陽性に注意が必要です。
MRIは検査部位を詳細に調べることができ、特に脊椎領域では骨や神経の状態がよく分かります。一方で撮影範囲に制限があり、全身を一度に調べることはできません。
レントゲン・CTは短時間で簡便に検査ができる長所があり、骨の形を調べること、骨折を見つけたり骨折のリスクを評価したりすることに長けています。一方で、骨の輪郭に変形がなければ、骨転移があっても異常として検出できないこともあります。
このように検査には一長一短あり、実際には組み合わせて検査をしています。
06:58 検査に関する皆さんからのご質問
検査についてお寄せいただいたご質問にお答えします。
「術後の骨転移を調べるのに一番有用な検査は何ですか?」
「腰痛で整形外科を受診し、レントゲンで異常がなければ、骨転移の可能性はないのでしょうか?」
ご質問ありがとうございます。
まずレントゲンやCTで大きな病変の有無をチェックし、症状を参考にMRIを、全身検査ならシンチグラフィーやPETを考えます。レントゲンでは、骨の変形のない、小さな骨転移が分からないこともあります。症状が続くときには何度か検査をして経時的変化を見たり、別の検査を追加したりするのが良いかもしれません。
「脚の神経痛で整形外科に受診したところ骨転移が見つかりました。受診は乳腺外科と整形外科のどちらが良かったのでしょうか?」
ご質問ありがとうございます。
基本的には症状から受診する診療科を選ぶのが良いと思います。したがって、腰痛や脚の神経痛という症状であれば、整形外科の受診が良いでしょう。
骨転移が判明した後は、症状や程度に応じて、乳腺外科と整形外科で協同で治療を進めていきます。
「複数の骨に転移が同時に起こることはありますか?」
ご質問ありがとうございます。
同時に起こることはあります。特に脊椎では一度に複数の骨転移が見つかることは珍しくありません。
ご理解いただけましたでしょうか。どうぞお大事になさってください。
08:35 本日のまとめ
本日のまとめです。
- がんの骨転移は無症状のこともありますが、痛み、骨折、麻痺、高Ca血症による意識障害など、日常生活動作や生活の質に影響します。
- 一長一短ある検査を組み合わせて行い、骨転移を診断します。
次回は骨転移の治療を中心にお話していきます。ご視聴ありがとうございました。