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2023.08.01

【NEWS】遺伝性乳がん術後の新たな選択肢 〜オラパリブ適応拡大〜


動画ナレーション全文

サブタイトル冒頭の「00:00(数字の部分)」をクリックすると、本動画のその時間からご覧になれます。

00:00​ はじめに

 乳がんの最新情報をお届けするBC Tube NEWS
 今回の話題は新しく適応が拡大されたお薬オラパリブです。今回の話題が関係あるのは、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんと、トリプルネガティブ、かつ遺伝性乳がん卵巣がんの患者さんです。

00:25 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とは?

 遺伝性乳がん卵巣がんとは、BRCA1/2遺伝子にがんになりやすくなる変異を持っている場合を指します。このがんになりやすくなる変異を病的変異といいます。
 遺伝性乳がん卵巣がんを詳しく解説した動画がありますので、こちらもあわせてご参照ください。

00:44 今回、新たに変わったことは?

 2022年8月にPARP阻害薬であるオラパリブの日本での適応が拡大されました。商品名はリムパーザです。
 これまで、オラパリブは乳がんではがん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんで使われていました。今回の適応拡大によって、これに「BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける薬物療法」が新たな適応として追加されました。
 この適応拡大によって、再発リスクが高いと予想される遺伝性乳がんの方に、今までよりも、さらに再発リスクを抑えるための治療選択肢が増えました。BRCA遺伝子変異を調べる必要がありますが、オラパリブの適応を判定する目的でのBRCA遺伝子検査も保険で行えるようになりました。

01:40 具体的な適応は?

 では実際どのような人が対象となるのかをみてみましょう。具体的には、今回の適応拡大のもとになったOlympiA試験の対象を参考にします。
ひとつめは、乳がん術後であること
ふたつめは、BRCA1/2遺伝子にがんになりやすくなる変化があること
みっつめは、6サイクル以上の術前もしくは術後化学療法をうけていることです
最後が再発リスクに関連する項目で、これはサブタイプごとによって少し違います。
ホルモン受容体陽性・HER2陰性では、リンパ節転移4個以上もしくは術前化学療法で残存病変があることが条件です。
 トリプルネガティブでは、リンパ節転移1個以上もしくは術後の病理検査で2cm以上の浸潤径があるか、もしくは術前化学療法で残存病変があることが条件です。これらをすべて満たす場合に、オラパリブの適応を積極的に検討することになります。

02:38 この場合の従来の標準治療は?

 ここで、これまでの「BRCA遺伝子陽性かつHER2陰性の再発高リスク乳がん」に対する標準治療を確認してみましょう。手術に加え、術前もしくは術後化学療法、そこへ適宜放射線治療を行います。そして、そのあとにホルモン受容体陽性乳がんであれば、ホルモン療法を5年から10年行うのが標準治療でした。これまではBRCA1/2遺伝子にがんになりやすくなる変化がある場合もない場合も、行う薬物治療に違いはありませんでした。
 今回の適応拡大によって、オラパリブをはじめの1年間内服することが標準治療の一つとして位置付けられました。再発率が高いと予想される場合に、今までよりも、さらに再発率を抑えるための治療の選択肢が増えたというのが今回のオラパリブの適応拡大です。今回もとになった研究では、術後3年の時点でおよそ42%再発を減らしました。

03:36 主な副作用

 主な副作用には、吐き気、疲労、貧血、嘔吐があります。今回の研究に参加した人のうち、5.8%は輸血が必要となるほどの貧血がありました。

03:50 さいごに

 実際の適応については、ここで紹介した条件に加えて、個々の状況に応じて判断されます。最終的には、担当医と相談して治療を決めましょう。BC Tubeは、本薬剤の販売元の企業との利益相反はありません。以上、BC Tube Newsでした。

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