乳がん手術前後の抗HER2療法ってどんな治療?
動画ナレーション全文
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目次
00:00 はじめに
今回は手術前後に抗HER2療法を受ける方のために、
- どうやって効くの?
- 治療期間はどれくらい?
- どんな効果があるの?
- 薬の種類による違いは?
という疑問を解説していきます。
00:26 HER2とは?
まず、抗HER2薬の「HER2」が何かわかりますか?
HER2は「HER2タンパク」を意味します。「HER2タンパク」とは、がん細胞の表面にあり、「がん細胞の増殖」に関わるタンパクです。この「HER2タンパク」がたくさんあると、「がん細胞が増えやすい」という特徴があります。
01:02 どうやって効くの?
それでは、抗HER2薬はどうやって効くのでしょうか?
抗HER2薬は「分子標的治療薬」の一種です。「分子標的治療薬」とは、がん細胞が増えるのに必要な特定の因子を狙い撃ちする薬です。つまり、抗HER2薬は「HER2タンパク」を狙い撃ちしてがんを抑える薬です。
対象はHER2陽性乳がん、すなわちHER2タンパクが細胞の表面にたくさんあるタイプの乳がんに使用され、乳がん全体の20%を占めます。
01:56 サブタイプ
HER2陽性乳がんは4つのサブタイプの中で「ホルモン受容体なし・HER2あり」と「ホルモン受容体あり・HER2あり」の2つのサブタイプが該当します。
02:17 薬の種類・治療期間・効果
薬には一般名と商品名の2つの呼び方があります。
手術前後に使用する抗HER2薬の種類は3種類あり、
- トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)
- ペルツズマブ(商品名パージェタ)
- T-DM1(商品名カドサイラ)
の3つです。治療期間は手術後あるいは手術前後に全体で約1年間であり、抗がん剤と組み合わせて治療を行います。効果としては、抗がん剤のみと比較して再発を約半分に減らすことができます。
03:14 再発リスクを減らす効果
手術前後の抗HER2療法は、からだのどこかに潜んでいるかもしれない画像検査では見えないがん細胞、すなわち「微小転移」を根絶して、再発を予防する目的で行います。
抗がん剤治療のみを受ける場合と比較して、約1年間の抗HER2療法を追加することで、再発のリスクを約半分に減らすことができます。
HER2陽性乳がんは以前は予後が悪かったのですが、抗HER2薬の登場により予後が劇的に改善されました。
副作用の中には、有効な予防法や対処法があるものとないものがあります。
例えば、吐き気や嘔吐には、化学療法の種類に応じて適切な吐き気止めが処方されたり点滴で加えられます。症状が強い場合には他の薬を追加する場合もあります。
また化学療法によっては脱毛がおこります。脱毛は治療を始めて2、3週間後くらいから始まります。眉毛、まつ毛や体毛が抜けることもあります。ウィッグ、つけ毛や、帽子などで対処します。
04:06 薬それぞれの特徴
それでは、3種類の薬の特徴を順番に見ていきましょう。
まずはトラスツズマブ、商品名「ハーセプチン」です。
HER2タンパクに結合してがん細胞が増えるのを抑えます。
主な副作用として、1つ目に心臓機能の低下が100人に2人〜4人の頻度で起こります。治療前と治療中に定期的な心臓機能検査を行うことが大切です。
また、アンスラサイクリン系抗がん剤と同時に使用すると心臓への副作用が増すので通常は併用を避けます。
2つ目が発熱と悪寒でおよそ40%に起こります。ほとんどが初回のみで、投与後24時間以内、多くは8時間以内に生じます。解熱剤を服用することで症状をやわらげます。
次はペルツズマブ、商品名「パージェタ」です。
HER2タンパクにトラスツズマブと違う部位で結合して、がん細胞が増えるのを抑えます。ペルツズマブは術前化学療法あるいは手術後の病理結果で再発リスクが高いと判断された場合に使用します。
トラスツズマブと一緒に使用することで、HER2タンパクをより強くブロックします。副作用はやや下痢が増えることがあります。
3つ目がT–DM1、商品名「カドサイラ」です。
抗HER薬であるトラスツズマブに「エムタンシン」という抗がん剤をくっつけた薬剤です。術前化学療法後の手術病理結果で腫瘍が残っている場合に適応があります。
副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、疲労感、肝機能障害、血小板減少がありますが、どの副作用がどの程度出るかは個人差があります。
07:01 治療の全体の流れ
全体で約1年間投与する抗HER2療法の治療の流れをお示しします。
こちらに示したのは主に行われている抗HER2療法と抗がん剤のタイミングと期間です。
どの抗HER2薬を使用するか、どのタイミングで行うかなどの治療方針は患者さんそれぞれの状況に応じて計画されます。
08:13 投与間隔
- 術後にトラスツズマブを1年間。
- 術後にトラスツズマブとペルツズマブを1年間。
- 術前にトラスツズマブとペルツズマブを3ヶ月、術後に残りの9ヶ月間。
- 術前化学療法後に手術病理検査で腫瘍が残っていた場合には術後に10ヶ月間T-DM1を投与します。
投与間隔はトラスツズマブは週に1回あるいは3週に1回、ペルツズマブとT-DM1は3週に1回です。
08:27 ポイント
今回のポイントです。
- 抗HER2療法は「HER2タンパクを狙い撃ち」してがん細胞が増えるのを抑える治療です。
- 抗がん剤治療に約1年間の抗HER2療法を追加することで再発を約半分に減らす効果があります。
- 手術前後に使用する抗HER2薬は3種類あり、病状に合わせて選択されます。
以上、BC Tubeでした。