乳房の症状について
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2023.04.04

乳房が痛いとき、どうする?


動画ナレーション全文

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00:00今回のメッセージ 

 今回のメッセージは

  • 痛い乳がんは少ない。
  • 痛い乳房の原因として多いのは乳腺症・乳腺炎である。

ということです。

00:18乳房痛とは?

 患者さんは「胸がチクチク痛い、胸が張る」と言われ受診します。外来受診をされる患者さんの約半数が乳房の痛みを訴えられて来られます。また、70-80%の女性が人生で一度は乳房の痛みを自覚すると言われています。

乳房痛の約70%が生理周期に伴い変動するタイプのものです。中には喫煙者、カフェイン摂取をする人、ストレスを感じている人が乳房痛を訴える頻度が高いというデータもあります。

 生理周期に伴い胸の痛み・張りが変動するのは何故でしょうか?

 まず生理周期における女性ホルモンの変化を見てみましょう。月経後より徐々にエストロゲンが上昇し、月経開始から約2週間で排卵が起こります。排卵後よりもう一つの女性ホルモンであるプロゲステロンが上昇し、黄体期と言われる期間に入ります。この黄体期では、女性の体は妊娠に向けて準備を行います。

 乳房では授乳の準備をするために、乳腺の中でも乳汁を作る小葉、そしてそれを取り巻く間質がふっくらと膨らみます。黄体期では乳腺は重さで最大40%、バストサイズが20%も大きくなると言われています。このホルモンレベルによる乳房の変化が胸の痛み・張りとして自覚される事が多いわけです。

02:06痛みと乳がん

 乳房の痛み=乳がんと感じている方も多いかと思います。ところが、乳房の痛みで受診される患者さんで乳がんと診断される割合は1%にも満たない状況です。痛い乳がんは稀だ、ということが分かります。

 ただし、乳房の痛みで受診された患者さんの中で、稀ではありますが、しこりを認めず皮膚が分厚く、赤くなる乳がん、炎症性乳がんと診断される方がいらっしゃいます。

それでは、乳房痛≠乳がんとなると、乳房痛を起こす状態というのは何が考えられるのでしょうか?様々な状況で乳房の痛みは起こりますが、中でも多いのは乳腺症・乳腺炎です。次はこの二つの状態について見ていきましょう。

03:01乳腺症

 乳腺症は、30歳〜40歳代の女性に多く見られます。卵巣から分泌された女性ホルモンの影響によっておこる乳腺の変化であり、病気というよりは体質に伴う変化と捉えた方が良いかもしれません。

 症状としては、しこり・痛み・乳頭からの分泌が挙げられます。患者さんは、
「はっきりとしたしこりではなく、周辺との区切りがあまりないようなしこり」
「胸全体がゴツゴツしていて、全部しこりのように思える」
「押すと痛くて、しこりがあるけれども生理が終わったら、しこりがどこにあるのか分からない」
 と言われます。乳頭からの分泌も透明・濁っているもの・血液交じりの赤茶けた分泌物と様々です。ほとんどの方が治療を必要とせず、閉経と共に症状が軽くなっていきます。

04:09授乳期乳腺炎

 次は痛みの原因として2番目に多い乳腺炎についてです。

 乳腺炎とは、乳腺症と同じく、乳房が痛くなる状態ですが、文字通り、何らかの理由で乳腺が炎症を起こし、痛み、腫れ、熱っぽい状態になることです。大きく分けて授乳期と授乳期ではないときにおこる非授乳期乳腺炎があります。

 授乳期乳腺炎のうち、うっ滞性乳腺炎は乳汁が乳房にたまることで起こる炎症です。
治療としては詰まっている原因の乳汁を取り去るのが最も重要ですので、乳房マッサージを行い、たまった母乳を出すことが治療に繋がります。

 化膿性乳腺炎は乳頭から細菌が乳房の中に入ることによって起こる炎症です。
治療では抗生剤や消炎剤の投与を行います。乳房内の膿のたまりが大きくなってしまったときは、皮膚を切開して内部の膿を取り出すこともあります。

05:14 非授乳期乳腺炎

 乳輪下膿瘍は乳輪の下に炎症が起き、膿がたまります。陥没乳頭の場合に多い傾向があり、喫煙との関連も言われています。化膿性乳腺炎と同じく抗生物質や消炎剤の投与を行います。膿がたまった場合は皮膚を切開して内部の膿を出しますが、症状を繰り返す場合は陥没乳頭を治す手術が必要となることもあります。

 次に、肉芽腫性乳腺炎は、稀な乳腺炎ですが、乳房の至るところに炎症が起き、しこりや皮膚の赤みが見られるの特徴です。はっきりした原因はいまだ不明ですが、妊娠・授乳、自己免疫疾患、ウイルス・細菌感染との関連が言われています。何度も繰り返すことが多いのが特徴です。治療に関しては抗生剤の投与は、ほぼ無効なため、ステロイド投与が行われます。自然と症状がなくなる方もいます。

06:29乳房が痛いとき、どうする?

 それでは乳房が痛いとき、どうすればいいでしょう?

 まずは、慌てないことが大事です。乳癌であることは稀です。
どのような痛みでしょうか?痛みはどこにありますか?
生理周期で変化しますか?痛みは続きますか?
痛み以外の症状はありませんか?触って、しこり、乳頭からの分泌がないか見てみましょう。

 触り方が分からない場合はBC Tube 「乳房セルフチェック動画も是非ご覧ください。痛みが続く時、乳房全体ではない痛み、痛み以外の症状がある時は、乳腺クリニック、または、外科・乳腺科のある病院を受診しましょう。

07:21 おさらい

 最後にポイントのおさらいです。

  • 痛い乳がんは少ない。
  • 痛い乳房の原因として多いのは、乳腺症・乳腺炎である。

ということです。

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