乳がん手術前後の化学療法(抗がん剤)【乳腺科医が解説】
動画ナレーション全文
サブタイトル冒頭の「00:00(数字の部分)」をクリックすると、本動画のその時間からご覧になれます。
目次
00:00 今回のお話
化学療法とは、いわゆる抗がん剤を使って行う治療のことです。今回は、手術前または手術後に行われる化学療法について、次のような疑問を通して解説します。
- 化学療法を行うかどうか、どうやって決めるの?
- どんな薬剤があるの?
- 副作用や気をつけることは?
00:32 手術前後の化学療法を行うかどうやって決めるの?
手術前後の化学療法を行うか、どうやって決めるのでしょうか?それは、化学療法を行うことによるメリットが大きいかどうかによって判断されます。化学療法のメリットの大きさは、①再発リスクと②がん細胞自体の化学療法の効きやすさ、の2点から主に判断しています。
01:00 再発リスクが高い場合
一つ目は、再発リスクが高いと判断された場合です。再発のリスクは、人それぞれ違います。手術前後の化学療法の目的は、からだのどこかに潜んでいるかもしれないがん細胞を攻撃して、再発・転移を防ぐことです。様々な治療を組み合わせて再発を予防していきますが、その手段の一つが化学療法です。とはいえ、再発リスクが同じでも、化学療法の効果はみんな一律同じわけではありません。
01:41 化学療法が効きやすいと判断される場合
そこで2つ目の判断材料として挙げられるのが、がん細胞自体の化学療法の効きやすさです。一言に乳がんと言ってもその性質は様々です。実際に化学療法が効くかどうか、治療前に正確に予測することは難しい面もありますが、様々な情報から、化学療法の効きやすさを予測します。再発リスクと化学療法の効きやすさをあわせて判断し、再発リスクがそこまで高くなくても化学療法が効きやすいタイプであれば、化学療法を行うこともあります。化学療法には副作用もありますので、メリットとデメリットのバランスを考えた上で、ご本人やご家族と相談して決めていきます。
02:36 化学療法はどのサブタイプにも使われうる
乳がんの治療は、女性ホルモン受容体のあるかないかや、HER2蛋白のあるかないかによって、サブタイプに分けて、それに合わせた治療が行われます。この中で、ほとんどのHER2(ハーツー)陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、化学療法の効果が期待できると判断されて、また再発リスクも考慮した上で、化学療法が行われます。さらに、ホルモン受容体陽性乳がんに対しても、必要に応じて化学療法が追加されます。つまり、化学療法は、どのサブタイプにも使われ得る治療です。
03:21 手術前後の化学療法を行うか具体的にどう判断するの?
では、実際には、化学療法を行うか、どう判断しているのでしょうか。具体的には、組織生検や手術の結果から得られる情報をなるべくたくさん集めて、再発リスクや乳がんの性質を判断します。これに加えて、患者さんの全身状態や治療に対する希望などを考慮して、化学療法を行うか、行うとすれば、どの治療を行うのか、相談して決められます。化学療法は手術の前に行われることも、後に行われることもあります。
04:04 化学療法の薬の種類は?
手術前後の治療では抗がん薬を1種類ではなく、何種類かを同時に使用することで、効果が最大になることが臨床研究で明らかになっています。アンスラサイクリン系薬剤を含むAC療法やFEC療法などは再発抑制効果が確認されている標準治療の一つです。これらにパクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン系薬剤を追加することによりさらに再発予防効果が上乗せされます。また、TC療法もよく使用されています。
通常、手術前後に化学療法を行う場合は、3〜6ヶ月の期間で行うのが一般的です。副作用は薬の種類によって異なります。個人差もあります。また副作用の程度や、どのくらい続くかも、患者さんによって異なります。
副作用の中には、有効な予防法や対処法があるものとないものがあります。
例えば、吐き気や嘔吐には、化学療法の種類に応じて適切な吐き気止めが処方されたり点滴で加えられます。症状が強い場合には他の薬を追加する場合もあります。
また化学療法によっては脱毛がおこります。脱毛は治療を始めて2、3週間後くらいから始まります。眉毛、まつ毛や体毛が抜けることもあります。ウィッグ、つけ毛や、帽子などで対処します。
05:52 継続して治療を行うために
手術前後の化学療法は、できるだけ継続して行っていくことが重要です。そのためにも、副作用の症状が続く場合や、不安や困った事がある場合には、我慢しないで、つらさを和らげるために自分にあった対処法があるかどうか、主治医やスタッフに相談しましょう。
06:15 今回のポイント
ポイントです。
- 乳がんの手術前後の化学療法は、再発リスク、全身状態、希望などを考慮し、相談して決められます。
- 主に使う化学療法はAC療法やFEC療法などのアンスラサイクリン系と、パクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン系です。
- 副作用は薬の種類によりさまざまです。副作用の程度やどのくらい続くかには個人差があります。化学療法を行うかどうかから、副作用への対処まで、全ての段階で、主治医とよく相談しながら、進めていきましょう。
以上、BC Tubeでした。