遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)って何?【乳腺科医が解説】
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目次
00:00 遺伝性乳がんの中で最も多いHBOC
一般的に、乳がんの患者さんの多くは、食生活などの環境要因が影響しておこると考えられています。
一方で、すべての乳がんの5−10%は遺伝性と言われています。今回は、遺伝性乳がんの中で、最も多い割合を占める、遺伝性乳がん卵巣がん症候群についてみていきます。
00:29 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは
遺伝性乳がん卵巣がん症候群は、HBOCとも呼ばれます。
BRCA1またはBRCA2遺伝子にがんになりやすくなるような変化をもっている場合に、遺伝性乳がん卵巣がん症候群と呼びます。この、がんになりやすくなる変化は、病的バリアントや病的変異とも呼ばれます。なお、BRCAは「ブラカ」と呼ばれることもあります。
01:05 BRCA1/2遺伝子の働きと、HBOCの関わり
BRCA1、BRCA2という遺伝子は、誰もが持っています。この遺伝子から作られるタンパク質は、DNAが傷ついたときに治すしくみに関わっています。環境要因などによって、DNAに傷がつくと、治すしくみによって修復されます。
HBOCの方の場合、BRCA1またはBRCA2に変異があり、タンパク質が作られなかったり、働かなかったりします。すると、傷ついたDNAを治すことができず、他の遺伝子の変化が起きやすくなります。その結果、がんが起こりやすくなります。
01:53 HBOCにおける乳がん・卵巣がんのリスク
では、HBOCの場合には、どのくらいがんになりやすいのでしょうか。報告によって数字にばらつきがあるものの、70歳までに乳がんにかかるリスクはBRCA1変異陽性で50−90%、BRCA2変異陽性で40−80%と言われています。卵巣がんにかかるリスクはBRCA1変異陽性で40−60%、BRCA2変異陽性で20−30%と言われています。通常のリスクと比べると、高いことがわかります。
ただし、100%でないことにも注目してください。HBOCでも、全員が乳がん、卵巣がんにかかるわけではありません。また他にも、膵がんや前立腺がんになるリスクが、通常よりも高いと報告されています。
02:54 HBOCの特徴
乳がん、卵巣がんにかかるリスクの他にもHBOCにはいくつかの特徴があります。まず、通常よりも若い年齢で乳がん卵巣がんを発症することがあります。両側乳がんや、両方または片方の乳房でも複数回乳がんを発症することがあります。
BRCA1遺伝子にがんにかかりやすい変化があった場合には、トリプルネガティブ乳がんにかかりやすい特徴もあります。ただし、BRCA2では通常のタイプの乳がんと同じタイプが多いです。男性でも乳がんにかかるリスクが通常より高いです。前立腺がんや膵がんになるリスクが、通常よりも高いとされています。
ただし、これらの特徴を必ず満たすというわけではありません。
03:47 ポイント
ポイントです。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、BRCA1・BRCA2の「がんになりやすくなる変化」が原因でおこります。HBOCでは、70歳までに乳がんにかかるリスクは40−90%、70歳までに卵巣がんにかかるリスクは20−60%と考えられています。
以上、BC Tubeでした。