乳房再建ってどんな手術?【形成外科医とコラボ】
動画ナレーション全文
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目次
00:00 はじめに
今回は乳房再建について、
- 乳房再建とは?
- 手術方法と違いは?
- 手術のタイミングと手術回数は?
- 合併症は?
という疑問について解説します。
00:27 乳房再建とは?
乳房再建は、手術によって失われた乳房を再建する方法であり、ほとんどの手術は「保険適用」です。乳房を再建することで再発が増えたり、再発の診断に影響したりすることはありません。ステージや病状によって再建できるかどうかが決まります。乳頭・乳輪も切除した場合には、乳房再建が落ち着いたら、乳頭・乳輪も再建できます。
01:04 再建方法
乳房再建は大きく分けて、人工乳房(インプラント)による方法と自家組織による方法があり、いずれも保険適用です。
自家組織による再建は、患者さん自身のからだの一部の組織を胸に移植する方法で、主に①お腹の組織を移植する方法と、②背中の組織を移植する方法の2つがあります。
01:41 人工乳房
まず、人工乳房による再建の流れを見てみましょう。はじめに、「エキスパンダー」という皮膚を伸ばすための袋を乳房を切除した後の胸の筋肉の下に入れます。その袋の中に、傷の確認も兼ねた外来通院のときに2週間から4週間に1回程度の間隔で生理食塩水を徐々に入れます。入れる量は健側乳房の大きさによります。その後およそ6〜8か月以上置いてから、2回目の手術でエキスパンダーを人工乳房(インプラント)に入れ替えるという方法です。
エキスパンダーを入れずに、乳房切除術後すぐに直接インプラントを入れる方法もあります。乳房全切除術のときにできた傷で再建の手術を行いますので、新たな傷はできません。
人工乳房による再建手術の特徴は入院期間が日帰り〜1週間、手術時間が1〜2時間、傷は乳房のみで、退院後早期に仕事復帰可能ですが、長期の経過観察が必要です。
03:11 自家組織(お腹)
次に自家組織による再建です。まず、お腹の組織を移植する方法には、お腹の皮膚、脂肪、筋肉に血管を付けたまま胸に移植して乳房をつくる方法と、お腹の脂肪と血管だけを移植して乳房をつくる方法があります。 どちらの方法でも臍の下に傷ができます。お腹の手術を受けたことのある方でも手術が可能な場合がほとんどです。
また、将来の妊娠・出産の可能性がある方はリスクについて主治医とよくご相談ください。
03:57 自家組織(背中)
背中の組織を移植する方法では、背中の皮膚、脂肪、筋肉に血管を付けたまま胸に移植して乳房をつくります。背中の組織を取る際に、背中に傷ができます。この方法は乳房のボリュームが比較的小さい方や、お腹からの再建ができない方に適した方法です。
自家組織再建の特徴は、入院期間が約2週間、手術時間が4〜8時間、傷は乳房とお腹あるいは背中の2か所、退院後1ヶ月程で仕事復帰可能で、長期の経過観察は不要です。
04:47 手術のタイミング
乳房再建法には、①再建を行う時期と、②再建術の回数(何回に分けて再建を行うか)によって名称があります。
「再建を行う時期」については、乳がんの手術と同時に再建手術を行う場合を「一次再建」、乳がんの手術後に改めて再建する場合を「二次再建」といいます。
再建手術の回数については、エキスパンダーで皮膚を伸ばさずに人工乳房または自家組織により1回で乳房を再建する方法を「一期再建」といい、初めにエキスパンダーを挿入して皮膚を伸ばしてから、乳房を再建する方法を「二期再建」といいます。
これらの組み合わせで4つのタイミングに分けられます。どの手術時期や方法を選んでも手術は保険適用であり、乳房再建はいつでもできます。
05:59 タイミングによる特徴
手術のタイミングによる特徴と手術回数について順番にご説明します。
まず「一次一期」再建は乳がん手術と同時に乳房を再建する方法です。1回の手術で再建まで完了、術式を検討する時間が少ない、人工物で合併症がやや増えるという特徴があります。
次に「一次二期」再建は乳がん手術と同時にエキスパンダーを挿入し、皮膚を伸ばしてから2回目の手術で乳房を再建します。特徴は、皮膚を伸ばすことができる、エキスパンダー挿入中乳房再建の術式を比較検討できる、2回の手術が必要です。
次に「二次一期」再建は、乳がん手術後に時間がたってから、2回目の手術で乳房を再建する方法です。特徴は、術後の抗がん剤・放射線治療が落ち着いてから再建を計画できる、2回の手術が必要、人工物の大きさに制限がある、自家組織の縫い目が増えるです。
最後に「二次二期」再建は乳がん手術のあと時間が経ってから2回目の手術でエキスパンダーを挿入して皮膚を伸ばし、3回目の手術で乳房を再建します。特徴は、術後の抗がん剤・放射線治療が落ち着いてから再建を計画できる、皮膚を伸ばすことができる、そして3回の手術が必要となります。
08:00 合併症
それでは、どのような合併症があるのでしょうか。まず、人工乳房と自家組織の両者に共通するものが感染、術後出血・血腫、浸出液貯留、術後創離開、皮膚壊死です。
人工乳房では被膜拘縮、エキスパンダーやインプラントの破損、また、稀なインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫という血液のがんの発症が報告されていますが、現在主流のスムースタイプのインプラントでは発症はゼロです。
自家組織では移植した組織である皮弁の壊死という合併症があります。
場合によっては、これらの合併症により、再手術が必要になることがあります。
09:04 術式選択
さまざまな術式、タイミングがある乳房再建について、乳腺外科医、形成外科医、家族・パートナー、あるいは乳房再建経験者などとよく相談をして納得のいく術式選択を行うことが大切です。
09:28 ポイント
今回のポイントです。
乳房再建には「人工乳房」による再建と「自家組織」による再建があります。
再建手術のタイミングは4通り、すべて保険適用で、乳房再建はいつでもできます。
術式、タイミングによってそれぞれ特徴がありますので、乳腺外科医、形成外科医などとよく相談して術式選択を行うことが大切です。
以上、BC Tubeでした。