【放射線治療】乳がん手術後の放射線療法
動画ナレーション全文
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目次
00:00 はじめに
今回は乳がん術後の放射線療法について、どんな治療?どんな効果があるの?タイミングやスケジュールは?副作用と気をつけることは?という疑問について解説します!
00:26 放射線って何?
まず、放射線とはどのようなものでしょうか?
目にはみえない光線のようなもので、宇宙から絶えず降り注いでおり、自然界のさまざまな物質から出ていますので、私たちは、ほんの少しの放射線をいつも浴びて生活しています。人間のからだを通過しますが、放射線があたっても熱くも痛くもありません。
01:00 どんな治療?
それでは、放射線療法はどんな治療でしょうか?
「患部に放射線を照射することで、がん細胞を消滅させる治療」です。放射線が体の中の細胞を通過するとき、がん細胞はダメージを受けやすいのに対して、正常細胞はダメージを受けにくく、回復しやすいという特徴があります。この違いを利用することにより、がん細胞を効率よく攻撃することができます。乳がんに対する放射線療法では、通常のX線写真を撮る装置よりも格段に高いエネルギーの放射線を発生させ、効率的にがん細胞を攻撃、治療します。
02:00 どうして少しずつ照射するの?
放射線療法は、一度にすべての量をあてるのではなく、「少しずつ分割」して「続けて」照射します。正常細胞への影響を小さくしつつ、がん細胞を徐々に弱らせて消滅させるためです。そのため、照射期間の途中に長期間の休みを入れてしまうと、同じ量を照射しても効果が薄れるので、なるべくスケジュールを守ることが大切です。
02:40 がん細胞への攻撃イラスト
放射線が、がん細胞を攻撃する様子をイラストで見てみましょう!
手術の後に残っている可能性がある、目には見えないがん細胞に対して放射線を照射することでがん細胞にダメージを与えます。続けて照射をすることでがん細胞への攻撃が強まり、がん細胞が次第に消滅しますが、正常細胞はダメージを受けにくく、回復します。
03:24 どんな効果があるの?
では、どんな効果があるのでしょうか?
放射線療法の目的は、手術後に残っている可能性がある「目には見えないがん細胞を消滅させること」です。
乳房温存手術後の場合は基本的に全例に行います。照射により乳房内の再発を約3分の1に減らす効果があり、生存率も向上させます。乳房全切除術後ではしこりが大きい(5㎝以上)、またはわきの下のリンパ節に転移がある場合に局所再発のリスクが高いため放射線療法を検討します。わきの下のリンパ節の転移の個数や程度、その他の状況を総合判断して決められます。照射により胸壁、周囲のリンパ節の再発を約3分の1に減らす効果があるだけでなく、生存率も向上させます。
04:42 照射場所と回数、期間
次に、照射する場所と回数、期間について見ていきましょう。
乳房温存手術後には、「全乳房照射」で手術した側の乳房全体に照射します。病状によって必要な場合には、「追加照射(ブースト照射)」でしこりのあった周囲に照射を行います。また、「鎖骨上窩照射」で鎖骨の上へ照射を行うこともあります。治療回数は計23〜25回(約5週間)、あるいは計15〜20回(約3〜4週間)で、十分な量の放射線療法を行います。
乳房全切除術後の場合は「胸壁照射」で手術した側の胸の範囲全体、「鎖骨上窩照射」で鎖骨の上に照射を行います。また、「内胸リンパ節照射」で胸の内側への照射を追加することもあります。治療回数は計23〜25回(約5週間)です。
06:15 照射中イメージとマーキング
実際の照射はこのイラストのように仰向けで行います。治療開始前に、どこにどれくらいの量の放射線をあてたらよいかを計画します。
毎回正確に照射するために、実際に放射線を当てる部分の線と、いつも同じ体勢を取るための基準となる線をマーキングします。このマーキングは照射位置を合わせるために大事なものですので、治療が終わるまで付けたまま過ごしてもらいます。
06:55 タイミング
放射線療法のタイミングは抗がん剤治療をいつ行うかによってかわってきます。
手術後に抗がん剤治療を受けない場合には、傷が治り次第なるべく早期(手術後20週以内)、手術後に抗がん剤治療を受ける場合には抗がん剤治療を先に行い、その後に放射線療法を行います。
07:28 実際のスケジュール
実際のスケジュールの例を見てみましょう。
25回、5週間の場合、外来治療で平日毎日通院し、1回の照射時間は1〜3分程度、そこに着替えと待ち時間を加えた時間が滞在時間の目安です。通院の時間以外は通常の生活が可能です。
07:58 副作用
最後に副作用についてご説明します。
副作用は主に照射した部位に出ますので、脱毛、めまい、吐き気、白血球減少などは起こりません。放射線が体に残ることはありませんので、帰宅後に乳幼児を抱いても安全です。疲れやだるさを感じる場合がありますが、日常生活や仕事をしながら放射線療法を受けることが可能です。
副作用は放射線療法中に生じるものと、治療後に生じるものがあります。
まず、治療「中」の副作用として多いものに日焼けのような赤み、かゆみ、ひりひり感が生じる「皮膚炎」があります。治療開始2〜4週間で出現し、治療が終了して2週間ほどで軽快します。保湿が大切であり、症状に応じて処方された軟膏を塗布します。皮膚が弱くなるため、絆創膏や湿布を貼らない、強くこすらないように気をつけてください。皮膚の赤みは次第に黒ずんだ日焼けのような状態に変化しますが、徐々に回復します。治療中に「疲れやだるさ」を感じた場合には無理をせず休息を取ることが大切です。
次に、放射線療法「後」の副作用です。まず、「肺炎」は100人に1〜2人に生じますが、適切な治療で治ります。咳や微熱が続く、息苦しさ、胸の痛みがあれば病院を受診し、「放射線療法を受けた」ことを医師に必ず伝えるようにしてください。照射の影響で「皮膚の汗や皮脂の分泌が減る」ため、乾燥しやすいので治療後も保湿の継続が大切です。「腕のむくみ(リンパ浮腫)」は気づいたら早めに主治医に相談してください。反対側の乳房や肺にがんが発生する「二次がん」は頻度は稀であり、放射線療法による利益は二次がん発症の不利益を上回ります。
10:52 ポイント
今回のポイントです。
放射線療法は手術後に残っている可能性がある「目には見えないがん細胞を効率よく消滅させる」治療です。局所再発を減らし、生存率を向上させます。平日毎日、3〜5週間の治療スケジュールで、なるべく間隔をあけないことが大切です。治療中、治療後に生じる副作用があります。
以上、BC Tubeでした。