術後ホルモン療法ってどんな治療?【乳腺科医が解説】
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目次
00:00 今回のお話
今回は乳がんの手術後にホルモン療法を受ける方のために、
- どんな効果があるの?
- 副作用は?
- 治療期間はどれくらい?
- 治療中に大切なことは?
という疑問を解説していきます。
00:23 ホルモン受容体陽性乳がんとは?
術後ホルモン療法は「ホルモン受容体陽性乳がん」の患者さんに行われます。この「ホルモン受容体陽性乳がん」とは、女性ホルモン、すなわちエストロゲンを栄養として増えるタイプで、乳がん全体の約70%を占めます。
00:47 どんな効果があるの?
ホルモン療法は女性ホルモンを減らす、あるいは女性ホルモンの作用を防ぐことによって、がん細胞が増えるのを抑えます。
この治療を術後に受けることによって、再発を約半分に減らす効果があります。期待される効果に対して、副作用が比較的軽度なことから、ホルモン受容体陽性乳がんでは、薬物治療の中で一番優先して投与が検討されます。
ホルモン療法は術後にからだのどこかに潜んでいるかもしれないがん細胞、すなわち微小転移を根絶して、再発を予防する目的で行います。ホルモン療法を予定された期間継続して受けることによって、再発のリスクを約半分に減らすことができます。
01:52 薬の種類は?
術後ホルモン療法の薬の種類としては、薬の作用で大きく2つに分けられます。
1つ目は、体内の女性ホルモン、すなわちエストロゲンの量を減らす薬で、生理を止める注射薬やアロマターゼ阻害薬があります。2つ目は、乳がん細胞内で女性ホルモンの作用を防ぐ薬で、抗エストロゲン薬があります。アロマターゼ阻害薬と抗エストロゲン薬は飲み薬です。
閉経前と閉経後とでは体内で女性ホルモンが作られる経路が異なるため、閉経状態に合わせて薬が選択されます。
02:43 ホルモン受容体とは?
ホルモン療法は女性ホルモンであるエストロゲンを餌に育つタイプの乳がんで効果があります。がん細胞がエサであるエストロゲンを取り込むための「口」をホルモン受容体といい、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の2種類があります。これらのホルモン受容体を持っている乳がんを「ホルモン受容体陽性乳がん」と言います。
03:19 閉経前と閉経後の女性ホルモン
閉経前と閉経後とでは体内で女性ホルモンがつくられる経路が異なります。
閉経前では、脳の視床下部からの指令で下垂体から性腺刺激ホルモンを出して卵巣を刺激し、卵巣はエストロゲンを作ります。
閉経後では、卵巣ではエストロゲンは作られません。その代わり、腎臓のすぐ上にある副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンからエストロゲンが作られます。このアンドロゲンをエストロゲンに作り変えるのが「アロマターゼ」という酵素です。
04:14 どうやって効くの?
ホルモン療法は、体内で女性ホルモンが作られるのを抑えたり、がん細胞内で女性ホルモンが作用するのを防いだりすることで、がん細胞が増えるのを抑える治療法です。ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性のがん細胞を多くもつほど効果的ですが、効果には個人差があります。
04:42 副作用は?
副作用は薬の種類によって異なります。また、患者さんによってどの副作用がでるか、どの程度か、どれくらい続くかも違います。症状が続く場合には我慢しないで主治医に相談しましょう。
05:05 治療期間はどれくらい?
では、手術後のホルモン療法はどのくらいの期間続けるのでしょうか?これまで説明したように、再発を約半分にするメリットがある反面、副作用というデメリットを伴うこともあります。
患者さんそれぞれのがんの性質、進行度、年齢によってメリットとデメリットのバランスを検討し、5年~10年間の治療期間が選択されます。
05:40 治療中に大切なことは?
ホルモン療法は5年〜10年にわたる長期間の治療になります。
治療期間が長いと、ついつい飲み忘れてしまうこともあると思いますが、飲み忘れが少ないほど再発予防の効果が高い、ということがわかっています。つまり、「一錠一錠が命を守ってくれる大切なお薬」ということです。1日1回服用するホルモン療法薬は、いつ服用しても効果は同じです。その日のうちであれば飲み忘れに気づいた時に服用しましょう!
06:24 今回のポイント
今回のポイントです。
- 術後ホルモン療法は再発を約半分に減らす効果があります。
- 副作用は我慢しないで主治医と相談をしましょう。
- 一錠一錠が命を守ってくれる大切な薬です。なるべく忘れずに服用しましょう!
以上、BC Tubeでした。