初期治療について
2023.07.31

【整形外科医が解説】がんと骨転移~治療編~  


動画ナレーション全文

サブタイトル冒頭の「00:00(数字の部分)」をクリックすると、本動画のその時間からご覧になれます。

00:00​ はじめに

 本日はがんと骨転移、治療編をお送りします。

 まず前回のおさらいです。がんの骨転移の症状は多彩で、日常生活動作や生活の質に影響を与えます。骨転移の検査には一長一短あり、組み合わせて診断をします。

今回も引き続き、ガイドラインの解説と、皆さんからのご質問への回答を中心にお送りします。

00:33 本日のメニュー

本日のメニューです。

  • 骨転移と診断されたら?
  • 骨転移の治療は?

また、皆さんからいただいた、こちらの質問にお答えします。

  • 骨転移は改善が難しい?
  • 骨転移を早期発見・治療すれば、他の臓器に転移しづらい?
  • 普段の生活で気を付けることは?

では本編に参りましょう。

01:03 骨転移と診断されたら?

 骨転移と診断されたら、どうすればよいのでしょうか。まず、最も大事なことは、あなたの日常を守ることであるということです。

 日常生活動作や生活の質を落とさないために、ご自身の状況に合わせた治療を選んでいきましょう。

01:22 骨転移の治療は?

 骨転移の治療にはどんなものがあるのでしょうか。

 骨転移に対しては、放射線療法、薬物療法、手術、リハビリテーションを組み合わせて、多角的にアプローチします。また、元々のがん治療を継続することも、大事なことです。

 では、各治療法を詳しく見ていきましょう。

01:46 放射線療法とは?

 まずは放射線療法です。放射線は幅広い用途があり、特に痛みを抑えることに秀でています。59%から73%で痛みが緩和、23%から34%では痛みが消失すると報告されており、その効果は3週間から8週間で出てくることが期待できます。また、骨折の予防や手術後の悪化予防にも使用されます。合併症としては倦怠感や吐き気、皮膚障害などがあります。

 骨転移に対し、単独でも、手術との組み合わせでも効果を発揮するのが放射線療法です。

02:27 薬物療法とは?

 薬物療法の主なものは骨修飾薬というお薬で、具体的にはゾレドロン酸やデノスマブという名前のお薬を指します。骨修飾薬は骨の細胞に直接作用し、骨転移により骨が壊れるのを抑えることで、骨折や背骨の神経圧迫を予防したり、手術や放射線療法が必要な病状に至ることを避けたりする目的で使用されます。骨修飾薬の登場により、骨転移の治療は飛躍的に進歩したのですが、注意すべき合併症として顎骨壊死、低カルシウム血症、腎機能障害、投与直後の発熱や関節痛などがあります。

 顎骨壊死は口腔衛生管理でリスクが低下するとされています。「口腔ケアと乳がん治療」の動画も是非ご覧になってくださいね。

 低カルシウム血症に対しては、あらかじめビタミンDやカルシウムを内服し、定期的に血液検査でカルシウムの値を調べることが推奨されています。

03:36 手術とは?

 次に手術です。

 骨転移はがん細胞が骨を壊して増殖しますが、背骨では骨転移で骨が弱くなり潰れるような形で骨折が起こったり、がん細胞が増殖して神経を圧迫したりすることがあります。その結果、腰部・背部の痛み、麻痺や手足の神経痛が引き起こされます。

 これらに対し、金属インプラントによる背骨の固定、骨やがん組織を削り神経の圧迫を解除、弱くなった部分に骨セメント充填、といった手術方法があります。腕や脚の骨では、強い痛み、骨折、または骨折の危険が非常に高い状態に対して、金属インプラントによる固定、がん組織を切除して人工関節置換などの手術方法があります。

 実際には骨転移の部位や状態、お体全体の状態などによって、手術をするのが適切かどうか、するならどのような方法が良いかを考えて選択します。

04:45 リハビリテーションとは?

 最後にリハビリテーションです。

 一般にリハビリテーションと言うと、運動機能の訓練を思い浮かべるかもしれませんが、がん治療におけるリハビリテーションとは、手足・体幹の訓練から心理社会的介入、自宅の改修まで、幅広いアプローチのことを指します。骨転移の治療では、放射線、薬物療法、手術との併用が基本となります。

 脊椎転移においては痛みの改善、鎮痛薬の減量、日常生活動作の機能回復、うつ状態の改善などが報告されています。リハビリテーションは全身的・社会的な効果を通して、日常生活動作や生活の質を改善できる、有効な方法です。

05:34 皆さんからのご質問

 ではここからは皆さんからいただいたご質問にお答えしていきます。

骨転移は改善が難しいと聞きますが、本当でしょうか?


ご質問ありがとうございます。
骨転移を完全になくすことはなかなか難しいと言えます。
しかし、様々な治療法で介入することで、生活の質を維持していくことは可能になってきています。
今回の動画をご覧になり、どう思われましたか?

骨転移を早期発見して治療すれば、他の臓器に転移しづらいということがありますか?

ご質問ありがとうございます。まだ十分にデータが蓄積されておらず、骨転移と他の臓器転移との関連は詳しく分かっていません。しかし、骨転移の症状に対しては早期に治療介入することで、負担の少ない方法で和らげることができる可能性があります。

普段の生活で気を付けるべきことはありますか?

ご質問ありがとうございます。現在骨転移がない方は、もとのがんの定期受診に加え、骨転移を疑う症状を自覚したら、主治医や整形外科医に診てもらうのが良いでしょう。骨転移を疑う症状については、前回の症状検査編の動画もご覧になってください。既に骨転移がある方は、病状に合わせた治療を継続し、整形外科医やリハビリテーション医の指示に従いましょう。骨が硬くなるなど治療効果が得られるまでは、運動負荷や日常生活強度のコントロールをすることが望ましいと思います。

ご理解いただけましたでしょうか。どうぞお大事になさってください。

07:23 本日のまとめ

 本日のまとめです。

 がんの骨転移に対しては多角的アプローチで日常生活動作や生活の質を守るために治療をします。病状により、放射線療法、薬物療法、手術、リハビリテーションを組み合わせます。

次回は、骨転移を3分の動画でまとめます。ご視聴ありがとうございました。

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