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2023.07.20

BRCA1/2遺伝学的検査と遺伝カウンセリング【乳腺科医が解説】


動画ナレーション全文

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00:00​​ BC Tubeの「乳がんと遺伝」に関する動画紹介

 BC Tubeでは、これまでに、まず乳がんと遺伝について解説した、「乳がんって遺伝するの?」の動画をアップしました。また遺伝性乳がんの中で最も頻度の高い遺伝性乳がん卵巣がん症候群について解説した、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)って何?」の動画もアップしています。

 この動画では、遺伝性乳がんが考えられたときに提示される、BRCA1とBRCA2の遺伝学的検査、および遺伝カウンセリングについて解説します。

01:35​ BRCA1/2検査方法と検査にかかる日数、費用

 BRCA1/2遺伝学的検査は、通常は血液を採取して検査を行います。検査にかかる日数は、検査内容や会社によって異なりますが、遺伝カウンセリングの場や主治医から、大まかな日程を聞くことができます。費用は、保険診療の範囲で検査を受けられる際は、3割負担の場合で、自己負担が約7万円です。保険外診療で受ける場合は、施設により費用が異なりますが、30万円弱の施設が多いです。

02:16​​ BRCA1/2検査の結果、3種類

 さて、BRCA1/2遺伝学的検査の結果を見てみましょう。検査の結果は、「がんになりやすくなる変化」がみつかる場合と、みつからない場合わからない場合に分けられます。それぞれ、詳しくみていきましょう。

02:36​ 「がんになりやすくなる変化」がみつかる場合

 まず、がんになりやすくなる変化が見つかった場合についてです。この検査結果によって、HBOCであることが確定されます。

 がんになりやすくなる変化があるとの結果を受け取った場合、遺伝的にがんになりやすいと判断し、乳がん、卵巣がん、その他のがんへの対策を行っていくことができます。血縁者に関しても、同じ「がんになりやすくなる変化」があるか調べることができます。

 ただし、「がんになりやすくなる変化」があるからといって、全員が乳がん、卵巣がんを発症するわけではありません。またその人が実際に乳がん卵巣がんを発症するのか、発症するとしたらいつ頃なのかは、遺伝学的検査の結果からはわかりません。

03:33​​ 「がんになりやすくなる変化」がみつからない場合

 「がんになりやすくなる変化」がみつからない場合についてみていきましょう。

 1つ目は、BRCA1/2遺伝子に、変化がない場合です。

 2つ目は、BRCA1/2遺伝子に、変化があるものの、「がんになりやすくなる変化」ではない場合です。つまり、がんのリスクと関係ないことが明らかになっている変化が見つかる場合のことです。

04:01​ 「がんになりやすくなる変化」かどうか、わからない場合

 最後に、3つ目の分からない場合についてです。BRCA1/2遺伝子に変化があり、その変化が、「がんになりやすくなる変化」ではあるかどうか、わからない場合があります。それぞれの方に見つかった変化が「がんになりやすくなる変化」であるかどうかは、過去に世界中で行われた検査のデータをもとに判定されます。そのため、過去のデータに照らし合わせても、がんとの関連がわからないような変化が発見されることがあります。この頻度は、日本でBRCA1/2遺伝学的検査を受けた方のうち、約6.5%です。このような結果が得られた場合には、既往歴や家族歴を踏まえて、今後の健康管理について話し合われます。

 今後、世界中でデータが蓄積されたり、あるいは遺伝子の変化の解析方法が充実したりすることによって、一旦わからないと判定された結果が、がんに関連するものであるかどうかが明らかになる可能性もあります。

05:12​​ 遺伝学的検査は、遺伝的リスクがないことを保証するものではない

 またBRCA1/2遺伝子に変化があったとしても、なかったとしても、その他の遺伝子の変化が存在している可能性もあります。遺伝学的検査では、BRCA1/2遺伝子による遺伝学的なリスクがあることは言えるものの、「遺伝学的ながんのリスクがないこと」を保証するものではありません。

05:38​​ 遺伝カウンセリングについて

 ここまでの内容を見てみると、遺伝学的検査の結果は簡単に解釈できるわけではないことがわかると思います。そして、耳慣れない、遺伝とがんの話題が突然出されて、不安になる方も少なくありません。遺伝について知ったり、ご自分の状況を一旦整理して理解したり、あなたらしい選択をするために、あなたに合った相談ができる場が、遺伝カウンセリングです。

06:23​ 遺伝カウンセリングで伝えること(自分や家族の状況)

 遺伝カウンセリングでは、まず、ご本人やご家族の詳しい状況から、どのくらい遺伝性乳がんの可能性があるか評価します。家系図を作成して、詳しくチェックするため、事前に血縁の方の状況や、過去にかかった病気などについて情報をまとめておくと、円滑に進みます。

06:37​ 遺伝カウンセリングで受け取ること(医学的情報)

 遺伝性乳がんの可能性が高いと判断された場合には、医学的情報の提供が行われます。具体的には、

  • 遺伝性乳がんとは何か。
  • BRCA1およびBRCA2の遺伝学的検査とは何か。
  • 検査結果によって得られる利益、不利益。
  • 検査結果を知った後に予想される影響

 遺伝に関する疑問、悩み、不安などについても相談できます。カウンセリングは、遺伝学的検査の前にも後にも、受けることができます。遺伝カウンセリングを受けることによって、正しいリスクの認知ができるとされています。またがんに関する不安・心配や抑うつを減らすことが示されています。

07:37​​ 遺伝カウンセリングや検査を希望しない場合

 最後に、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を希望しない場合にはどうなるのでしょうか。遺伝に関するお話を担当医から提示されたからといって、必ずカウンセリングや検査を受けなくてはならない、ということはありません。
希望しない場合にも、検査を受けたかどうかによらず、最善の医療が提供されます。また今は検査を受けないと決めたとしても、将来状況が変化した時など、受けたいと思った時にはいつでも受けることができます。

08:15​​ 今回のポイント

 今回のポイントです。

  •  遺伝学的検査は、採血した血液を用いて検査することが大半です。乳がんと診断された方で、項目に該当する患者さんは、BRCA1/2遺伝学的検査を保険診療で受けることができます。
  •  遺伝学的検査の結果、「がんになりやすくなる変化」がみつかる場合には、HBOCの確定診断になります。「がんになりやすくなる変化」がみつからない場合、あるいは「がんになりやすくなる変化」かどうかわからない場合には、遺伝性乳がんを完全に否定できるわけではありません。
  •  遺伝カウンセリングは遺伝に関する疑問や不安を解決し、あなたらしい選択をするためのサポートを受ける場です。わからないことは相談して、納得できる選択ができるように、ぜひ有効に活用しましょう。

 以上、BC Tubeでした。

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