乳腺科での検査について
病理
2023.08.01

【病理前編】乳がん手術後の検査結果~ステージ・サブタイプ~


動画ナレーション全文

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00:00 はじめに

 病理検査とは、体の一部分からとった細胞や、病変の一部を切り出した組織を顕微鏡で観察することにより、性質を詳しく調べる検査のことです。

 乳がんの手術の後には、病理検査の結果説明があります。これから結果を聞く方の中には、どんな結果が返ってくるのか、不安に思われる方もいらっしゃると思います。すでに結果を聞いた方の中には、専門的な項目が多くて、難しいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。今回は、そのような方々の疑問にお答えします。

 また、病理結果の話を聞いてからしばらく経った方も、病理結果について改めて見直して、主治医やスタッフとお話をするきっかけになればと思います。

01:01 細胞の検査、組織の検査

 まず細胞の検査と組織の検査について、それぞれ見てみましょう。細胞の検査、細胞診は、顕微鏡で見ると、パラパラと細胞が見えることが多いです。

 一方で、針生検(組織診)、および手術で取った標本を観察する検査では、細胞が集まり、さらに周りの血管やリンパ管を含む間質、脂肪組織など、組織の構造が見えます。そのため、乳がんの場合だと、がん細胞の顔つきだけでなく、がん細胞の周りの組織への広がりなども観察することができ、細胞診よりも多くの情報を得ることができます。

 細胞や組織をとる方法はいくつかあります。細胞診では、乳房に細い針を刺して細胞をとります。組織診では、局所麻酔を行ったうえで、やや太い針を刺して行います。また手術標本の病理検査では、手術で切除した標本を使って検査を行います。今回は、このうち、手術標本を用いた病理検査の結果の見方について解説します。

02:21 手術後の病理検査、何のために行う?

 病理検査は何のために行われるのでしょうか。

 1つは、乳房の中の病変が、がんかどうかを診断するためです。生検では病変の一部を取り出して検査されますが、手術の後の病理検査では、病変全体を観察し、手術の前の診断と違いがないか確認を行い、治療が必要な病変なのか、より正確に判断することができます。なお、「病変」とは、検査や手術などで発見された、病気による変化のことです。

 2つ目の目的は、組織の結果からがんの性質を知り、その後の治療方針の決定に活かすことです。この情報を参考にして、治療を行うか、行うとすればどんな治療を選択するか、相談されます。

03:22 病理検査結果を、治療にどう活かす?

 では、病理検査結果を、手術の後の治療にどうやって活かすのでしょうか?

 まず重要なのは、病理検査結果を参考にして、病期、ステージを決定し、進行具合を評価することと薬の効き具合や再発リスクと関係する「サブタイプ」を評価して、治療方針の決定につなげることです。

03:48 手術後の病理検査、どんな項目があるの?

 では乳がんの病理検査では、具体的にはどんなことをチェックしているのでしょうか。大きく分けると、乳がんの状態、広がり、乳がんの性状・がん細胞の顔つきを見る指標となる、たくさんの項目を詳しく評価します。

 では、最も重要な、病期(ステージ)、サブタイプを決定する項目から順に見ていきましょう。

04:19 浸潤(乳管内から間質に出る)

 まずは、浸潤の有無についてです。浸潤とは、がん細胞が乳管の中から間質と呼ばれる外側の領域にでていくことをいいます。浸潤部が認められた場合には、浸潤がんと診断されます。浸潤部が認められない場合には、非浸潤がんの診断となります。

 非浸潤については、BC Tube動画、DCISとは?症状・検査編で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。

04:56 病変の大きさ、皮膚・胸壁への浸潤

 続いて、病変の大きさです。浸潤がんの場合、浸潤部のことを大きさと表現します。非浸潤部は、広がりが大きくても、予後やその後の治療に影響することは少ないため、大きさには含めません。病理結果によっては、浸潤部の大きさと、非浸潤部を含めた全体の大きさが別々に記載される場合もあります。

05:28 リンパ節転移

 手術で切除したリンパ節は、病理検査で評価されます。リンパ節転移がある場合、転移陽性と表現します。リンパ節転移がない場合には、陰性と表現します。

 転移があるかないか、あるとすれば、どこのリンパ節にあるのか、何個切除したうち、何個に転移が認められるのか、無視できるぐらい小さい転移なのかなど、細かく評価されます。

06:00 病期(ステージ)を決める

 浸潤がんの場合は、

T:浸潤部の大きさや皮膚胸壁への浸潤

N:リンパ節転移

M:他の臓器への転移の有無

を併せて、病理学的病期を決定します。このTNMのうち、TとNは病理検査結果を元に判定されます。他の臓器への転移は、画像検査などを用いて判定されます。

06:34 サブタイプを決める

 続いて、サブタイプを決めるための病理検査結果を見ていきましょう。

 ホルモン受容体とは、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体のことです。乳がん細胞の表面にHER2蛋白がある乳がんを「HER2陽性乳がん」と呼びます。ホルモン療法、およびHER2の詳しい解説は、BC Tube動画「乳がん手術前後の薬物療法」をご覧ください。このホルモン受容体とHER2蛋白のあるかないかによって、4つのサブタイプに分けて、乳がんの治療が行われます。

 これに加えて、他の病理検査結果から得られた再発リスクを考慮しながら、治療が選択されます。

07:25 前編のまとめ

 前編のまとめです。

 手術の後の病理検査は、乳房の中の病変の診断を改めて確認することと、そして組織の結果からがんの性質を知り、その後の治療方針の決定に活かすこと、を目的として行われます。病理検査ではとても多くの項目を評価します。そしてこのような項目の結果から、病期、およびサブタイプを決めて、治療に活かしていきます。後編では、病期、サブタイプを決める項目以外を紹介していきます。

 ぜひ続きもご覧ください。

YouTube動画本編はこちらから⏬

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