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2023.07.31

【アルコール】お酒と乳がん【乳腺科医が解説】 


動画ナレーション全文

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00:00​ はじめに

 この動画では、お酒と乳がんの関係について解説していきます。

 お酒と乳がんは関係があるのでしょうか?ここでは、乳がんを発症していない方、乳がんを発症されている方の2つに分けて、考えていきましょう。

00:30 乳がんを発症していない方へ

 まず、乳がんを発症していない方のお酒と乳がん発症リスクについて、次のような疑問をもとに見ていきましょう。

  • お酒を飲むと、乳がんになりやすくなるの?
  • お酒をのむときに気をつけることは?

00:49 お酒を飲むと、乳がんになりやすくなるの?

 国際的ながん研究機関の報告ではアルコール飲料の摂取により、乳がん発症リスクが高くなることはほぼ確実、とされています。

 リスクとは、危険性、つまり乳がんへのなりやすさということなので、お酒を飲むと乳がんになりやすくなる、ということです。これは日本人を対象とした研究でも報告されています。このグラフは日本人約16万人を対象とした飲酒と閉経前乳がんの発症リスクをみた研究の結果です。

 飲酒頻度でいうと、お酒を全く飲まない人を基準とした場合、ほぼ毎日飲むひとは1.37倍乳がんにかかりやすくなり、飲酒量でいうと、エタノールの1日摂取量が0gの人を基準にした場合、23g以上では1.74倍乳がんにかかりやすくなるということが報告されています。また、飲酒の頻度が増すほど、飲酒量が増えるほど、乳がん発症リスクは上がるという傾向がありました。

02:12 お酒を飲むときに気を付けることは?

 では、お酒を飲むときにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?

 まず、摂取量の目安についてです。適切なお酒の量というのは性別や年齢、個人の体質により異なります。一つの目安として厚生労働省では「節度ある適度な飲酒量」を1日平均純アルコールで約20gと定義しています。これは具体的にはビール中瓶1本、日本酒1合などにあたります。

 ただし乳がんの発症リスクという点では、全く飲まない人に比べて飲めば飲むほどリスクはあがりますので、お酒を飲むときはこのような知識をもったうえで上手に楽しめるとよいですね。

 次にお酒の種類についてですが、お酒の種類によって乳がんになりやすくなったり、なりにくくなったりするというわけではありません。アルコール度数が低ければ乳がんの発症リスクを避けることができるわけではなく、摂取するエタノールの総量がリスクと関連すると考えられています。

 また、これくらいなら安心という閾値(いきち)はなく、飲まないにこしたことはありませんので、機会飲酒程度に、ほどほどの量を心がけましょう。

03:50 どんな人が特に気をつけるといいの?

 どんな人が特に気をつけるとよいのでしょうか?

 飲酒が乳がんに影響をおよぼすしくみはまだよくわかっていない部分も多いのですが、1つの説として、アルコールが代謝されるときにできるアセトアルデヒド、という物質の発がん性が関係しているのではないか、というものがあります。

 そして日本人では、この発がん物質を分解する能力が低い体質の方が、欧米にくらべて多いということが知られています。この体質はお酒を飲んだときの症状で見分けることができ、お酒ですぐに顔が赤くなる方はアセトアルデヒドを分解しにくい体質ということになります。そしてこの体質をもつ方は、乳がん以外のがんについての研究で飲酒による発がんのリスクがより高くなることがわかっており、乳がんでも同様にリスクが高い可能性がありますので、とくに無理な飲酒をしたり、習慣的にたくさんのお酒を飲むことは控えたほうがよいかもしれません。

 一方でお酒で顔が赤くならない方であっても、飲めるからといって飲み過ぎてしまってはリスクを高めることになります。どちらにしても注意しましょう。

05:25 乳がんを発症されている方へ

 では、すでに乳がんを発症されている方の場合、お酒と乳がんの関係はどうなっているのでしょうか?お酒を飲むと乳がんが再発しやすくなるのでしょうか?

 これまでの研究で、飲酒によって、乳がんが再発しやすくなったり、乳がんで命を落としやすくなったりする可能性は低いと考えられています。ただし、ここまでの動画でお伝えしたように、反対側や残した乳房に新たな乳がんを発症するリスクは上がることになります。乳がん以外の病気に対してもリスクが高まるといわれているものもあるので、飲みすぎには注意して、ほどほどにとどめておくのがよいでしょう。


06:17 まとめ

 それでは、お酒と乳がんについてのまとめです。

 お酒を飲めば飲むほど乳がんの発症リスクは高まります。ただし、乳がん発症後は再発のリスクと関連する可能性は低いといわれています。飲む量も、飲む頻度も適切にとどめて、節度ある飲酒を心がけましょう。

 以上、BCTubeでした。

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