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2023.08.01

【NEWS】トリプルネガティブ乳がん術前・術後治療の新たな選択肢 ペムブロリズマブ適応拡大


動画ナレーション全文

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​ はじめに

 乳がんの最新情報をお届けするBC Tube NEWS

今回の話題は新しく適応が拡大されたお薬ペムブロリズマブです。

00:23 今回、新たに変わったことは?

 今回の話題が関係あるのは、トリプルネガティブ乳がんの患者さんです。

 2022年9月に抗PD-1抗体であるペムブロリズマブの日本での適応が拡大されました。商品名はキイトルーダです。これまで、ペムブロリズマブは、乳がんではPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんで使われていました。今回の適応拡大によって、これに「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術前・術後療法」が新たに追加されました。

00:57 ペムブロリズマブはどうやって効果を発揮するのか

 ペムブロリズマブはどのように効果を発揮するのでしょうか。

 この薬は、直接がん細胞を攻撃する薬剤ではありません。免疫細胞であるリンパ球を活性化させることで効果を発揮します。通常、リンパ球は働き続けると疲労してきます。そのようなリンパ球には、PD-1という分子がでてきます。そして、そこにがん細胞やマクロファージなどの周囲の細胞のPDーL1という分子とくっつくと、そのリンパ球は死んでしまいます。

 そこで、ペムブロリズマブを投与することで、PD-1はPD-L1とくっつくことがなく、リンパ球は活性化した状態を維持することができ、このリンパ球ががん細胞を攻撃することができるという仕組みです。

01:48 具体的な適応は?

 では実際どのような人が対象となるのかをみてみましょう。

 具体的には、今回の適応拡大のもとになったKEYNOTE522試験の対象を参考にします。ひとつめは、トリプルネガティブ乳がんであること、ふたつめは、術前化学療法を予定していることです。KEYNOTE-522試験ではstageII-IIIの患者さんが対象となっていました。このような場合には、ペムブロリズマブを用いた術前・術後療法を積極的に考慮していきます。

02:25 この場合の従来の標準治療は?

 ここで、これまでの「トリプルネガティブ乳がんで術前化学療法を行う場合」の標準治療を確認してみましょう。

 従来は術前化学療法として、アンスラサイクリン系とタキサン系の化学療法を3ヶ月ずつ行ったのちに、手術を行います。今回の適応拡大によって、まず術前化学療法と術後治療でペムブロリズマブを使用することができるようになりました。

 術前化学療法ではペムブロリズマブは化学療法薬と一緒に使用しますが、ここでは、カルボプラチンとパクリタキセルの併用とアンスラサイクリン系の薬剤を一緒に使用します。その後、手術を行い、術後の薬物療法として、ペムブロリズマブの投与をさらに約7ヶ月行うことが選択肢となりました。

03:18 ペムブロリズマブを併用した場合の効果

 術前化学療法の後に、術後の病理検査でがん細胞が残っていない状態を、病理学的完全奏効といいます。この研究でのペムブロリズマブなしでは、病理学的完全奏効率は51.2%だったのに対して、ペムブロリズマブを用いた治療は、64.8%と改善しました。

03:52 主な副作用

 ペムブロリズマブは化学療法と一緒に行いますので、一緒に使う化学療法の副作用が主にみられます。ペムブロリズマブは、免疫関連有害事象とよばれる、免疫反応が活性化してしまうがために起こる特殊な副作用があります。

 ここでは、比較的よく見られた免疫関連有害事象について解説します。具体的には、甲状腺機能低下症、皮疹、甲状腺機能亢進症、副腎不全、間質性肺炎などがあります。免疫関連有害事象は、ここで挙げた以外でも、からだ中、様々な症状で発症することがあります。 必ず、かかりつけの医療機関で副作用に関する指導を受けてください。

04:39 さいごに

 実際の適応については、ここで紹介した条件に加えて、個々の状況に応じて判断されます。最終的には、担当医と相談して治療を決めましょう。BC Tubeは、本薬剤の販売元の企業との利益相反はありません。

以上、BC Tube Newsでした。

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