BC Tube NEWS
乳がんの治療中
転移・再発について
2023.08.02

【新たな分類HER2-Low登場】トラスツズマブデルクステカンのHER2低発現への適応拡大~進行再発乳がんの治療に新たな選択肢~


動画ナレーション全文

サブタイトル冒頭の「00:00(数字の部分)」をクリックすると、本動画のその時間からご覧になれます。

00:00​ はじめに

 乳がんの最新情報をお届けするBC Tube NEWS

今回の話題は、手術不能または再発乳がんの新たな治療選択肢、トラスツズマブ デルクステカンの適応拡大についてです。

00:20​ 今回の話題が関係のあるサブタイプは?

 今回の話題が関係するサブタイプは、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんとトリプルネガティブ乳がんで、これまでHER2陰性と呼ばれていたタイプです。サブタイプについては詳しく解説した動画がありますので、そちらをご参照ください。

00:46 新たな分類 HER2低発現とは?

 HER2陽性と陰性は、HER2がどれほど強くでているかによってわけられています。HER2タンパクの検査で、3+と2+でかつHER2遺伝子の増幅がある場合をHER2陽性とし、それ以外は陰性です。陰性の中にも、弱いながらHER2がでている場合があります。

 今回新たな概念として登場した「HER2低発現」は、このうち、1+と2+で遺伝子増幅がなかった場合を指します。

 トラスツズマブ デルクステカンはすでにHER2陽性乳がんで効果があることがわかっていますが、HER2低発現すなわち少しだけHER2がでている場合でも、効果があることがわかったのです。

 HER2陰性乳がんのうち、およそ60%がHER2低発現に分類されます。このHER2低発現の概念は、今回の話題であるトラスツズマブ デルクステカンを投与する際にだけ考慮されます。HER2陽性の定義が変わったわけではありませんので、トラスツズマブやペルツズマブのような他の抗HER2療法の適応は特に変わりません。

02:20​ 今回、新たに変わったことは?

 2023年4月にDESTINY-breast04試験という臨床研究の結果をもとに、トラスツズマブ デルクステカンの日本での適応が拡大されました。商品名はエンハーツです。

 これまで、トラスツズマブ デルクステカンはHER2陽性の手術不能または再発乳がんに使われていました。今回の適応拡大によって、「化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能または再発乳がん」が新たに追加されました。この場合のHER2低発現は、過去の診断結果ではなく、新たに専用の検査で判断をする必要があります。

03:16​ トラスツズマブデルクステカン(商品名:エンハーツ)とは?

 トラスツズマブ デルクステカンは、トラスツズマブという抗HER2薬に、抗がん剤をくっつけた抗体医薬複合体と呼ばれる種類の点滴薬です。トラスツズマブはHER2と呼ばれるがん細胞の表面にあるたんぱく質にくっつきます。そして、がん細胞の中に取り込まれ、がん細胞の中で、抗がん剤であるデルクステカンが離れ、がん細胞を攻撃する仕組みです。

03:55 具体的な適応は?

 では実際どのような人が対象となるのかをみてみましょう。具体的には、今回の適応拡大のもとになったDESTINY-Breast04試験の対象を参考にします。ひとつめは、HER2低発現が確認されていることです。ホルモン受容体は陽性でも陰性でもOKです。ふたつめは、再発治療として1つ以上、化学療法を受けていることです。そして最後は、治療を始める時に、間質性肺炎という特殊な肺炎がないことです。

04:42 この場合の従来の標準治療は?

 それでは、化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能または再発乳がんのこれまでの標準治療をみてみます。これまでは、HER2低発現に対する特別な治療はありませんでしたので、再発治療の化学療法中に病状の進行や副作用などで治療変更が必要になった場合、違う種類の化学療法を行っていました。

 しかし、今回の適応拡大によって、化学療法の治療変更を行う際に、トラスツズマブ デルクステカンを使用することが標準治療の一つとして位置付けられました。

05:31 治療効果

 DESTINY-Breast04試験では、トラスツズマブデルクステカンを投与することで、従来の化学療法と比べ、およそ2倍の奏効期間と1.36倍の生存期間が得られました。


05:48 用法・用量

 用法・用量は、トラスツズマブ デルクステカンを1回 体重当たり5.4mgを3週ごとに点滴静注します。

06:03 主な副作用

 主な副作用には、はき気、嘔吐、倦怠感、脱毛、間質性肺炎などがあります。

 中でも間質性肺炎と呼ばれる薬によって起こる肺炎には特に注意が必要です。息切れや発熱、咳などは間質性肺炎の症状のことがあります。投与中にそのような症状がある場合には、早めに通院している医療機関での相談が必要です。

06:41 さいごに

 実際の適応については、個々の状況に応じて判断されるため、担当医とよく相談してください。

以上、BC tubeでした。

YouTube動画URLのQRコード

YouTube動画本編はこちらから⏬

toppage