乳がんと診断された
乳がんの治療中
乳がんの診断から治療までの流れ
初期治療について
2023.06.24

乳がんの初期治療って何?【乳がんダイジェスト後編】


動画ナレーション全文

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00:00 乳がんダイジェスト後編

 後編では乳がんの初期治療の流れを見ていきます。

00:10 初期治療とは?

 簡単に前編のおさらいです。
 乳がんと診断され、最初に受ける治療を「初期治療」と呼びます。初期治療には、化学療法・ホルモン療法・分子標的治療といったお薬の治療である全身治療と、手術、放射線療法といった腫瘍のある場所に対する局所治療の二つに大きく分けられます。乳がん治療というのは病状に合わせて局所治療と全身治療を組み合わせながら治療を行います。

 乳がんの治療は個人個人の病状に合わせて行われます。治療の過程で手術を受けられる方と、お薬の治療をメインに受けられる方がおられます。

 つぶちゃんは手術を受けることになりました。一緒に乳がんの手術・放射線治療についてみていきましょう。

01:05 乳がんの手術

 乳がんの手術の意味合いというのは二つあります。局所というのは、腫瘍と、それを取り巻く組織、脇の下をはじめとした、周りのリンパ節を指しますが、一つはこの局所のがんを取り除く、そしてもう一つは取った組織の結果からがんの性質を知る、という2つの目的があります。
 手術の内容は乳房に対する手術と脇の下のリンパ節に対する手術と大きく二つに分かれます。

01:38 乳房に対する手術 (乳房全切除術・乳房温存手術)

 まずは乳房に対する手術を見ていきましょう。乳房全切除術は、がんが大きい場合や広範囲に広がっている場合などに適応となります。皮膚を切開して乳頭、乳輪、乳房のふくらみを含めてすべて切除する手術です

 乳房温存手術は、適応となるのは、患者さんの乳房の大きさにもよりますが、原則がんの大きさが3cm以下であること、乳房の中に複数の乳がんがないこと、色々な画像検査で、がんが広範囲に広がっていないことが確認できる場合です。皮膚を切開した後、安全域としてしこりのまわりに少しのりしろをつけて部分的に切除する方法です。

 大事なのは手術によって見えるがんをしっかり取り除くことです。乳房全切除術か温存手術かは患者さんの病状、乳房の大きさ、希望などを総合的に判断して選択されますので、どちらの方法が優れているという事ではありません。

02:44乳房に対する手術 (腋窩リンパ節郭清・センチネルリンパ節生検)

 次にわきの下のリンパ節の手術を見ていきましょう。

 手術前に画像診断で脇の下のリンパ節に転移があると診断された場合は、リンパ節の取り残しがないよう周りの脂肪も含めて一塊(ひとかたまり)に切除する腋窩リンパ節郭清(かくせい)を行います。

 触診や画像診断などで脇の下のリンパ節への転移がないと判断した場合は、センチネルリンパ節生検を行います。センチネルリンパ節とは、乳房内から乳がん細胞が最初にたどりつくリンパ節です。腫瘍の周りや乳輪に色素などを注射すると、注射したものはリンパ管を通じてセンチネルリンパ節に集まります。センチネルリンパ節を取り出してがん細胞がなければ、それ以外のリンパ節にも転移がないと考えられますので、腋窩リンパ節郭清を省略できます

03:44 乳房再建

 乳房再建は、手術によって失われた乳房を、形成外科の技術によって再建する方法です。乳房再建には、 自家組織(自分のからだの一部)を用いた再建法と人工乳房(インプラント)で行う再建法があります。乳房を再建することで再発が増えたり、再発の診断に影響したりすることはありません

04:13 乳がんの術後放射線療法

 次に放射線療法についてです。

 目に見えるしこりは手術で取り除いています。術後放射線療法の目的は手術で取りきれなかった可能性のある、目にはみえないがん細胞を死滅させることです。多くの場合、外来治療が可能です。1日に1回 (1~3分)、平日に毎日、合計数十回行います。

 乳房温存手術後の放射線療法は、原則すべての乳房温存手術後に勧められます。温存した乳房からの再発を防ぐ目的で行われます。乳房内再発が3分の1に減少、生存率が向上するというデータに基づいて、行われます。原則すべての乳房温存手術後に勧められる場合によっては首の付け根(鎖骨上窩)のリンパ節にも照射を行います。

 乳房全切除後の放射線療法ですが、手術の結果、腋窩リンパ節転移がある、しこりが大きい方などが、放射線療法の適応として考慮されます。乳房を切除したあとの胸壁、リンパ節からの再発を防ぐという目的のために行われます。

05:33 乳がんの薬物療法

 さて、つぶちゃんはお薬の治療を受けることになりました。
 乳がんのお薬の治療はどのようなものがあるのか一緒に見ていきましょう。

 乳がんの薬物療法には3つの種類があります。化学療法、いわゆる抗がん剤、ホルモン療法、HER2陽性乳がん患者さんに適応となるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をはじめとした分子標的治療です。これらを病状に合わせて組み合わせて治療が行われます。

05:54 微小転移について

 そもそも、手術をちゃんと受けて乳がんを取り除いたのに、お薬の治療まで何故しなければならないのでしょう?
乳がんがしこりとしてみつかったときに、またはみつかる前から、すでにからだのどこかにがん細胞が微小転移という形で血液中・リンパにのって乳房以外の体のどこかに存在しています。この微小転移をすべて手術で取り除くことはできません。このような目に見えない細胞が長い年月をかけて増え、目に見える大きさの塊となると、転移・再発として検出されるわけです。ですので術後に薬物療法を行う理由は、この微小転移を根絶やしにすること、そして再発リスクを下げ、生存率をあげることにあります。そして薬物療法は術前・術後いずれのタイミングでも行う事が可能なのです。

06:57 薬物療法の決め方

 術前もしくは術後のお薬の治療はどのように決めるのでしょうか。診断時の生検、手術の結果などにより乳がんの顔つきであったり、どのようなお薬が効くのかを調べています。この結果をもとに乳がんの性質と再発のリスクを判定します。加えて、患者さんの全身状態、治療に対する希望、月経の有無などを考慮して、化学療法・ホルモン療法・分子標的治療をどのように組み合わせるのかが決定されます

07:36 ポイント

 最後に、乳がん初期治療のポイントです。

  • 手術は見えるしこりを取り除く、取り除いたしこりの性質を調べるという意味があります。
  • 放射線療法は見えない局所のがん細胞を死滅させるために放射線をあてるという意味があります。
  • 薬物療法は見えない微小転移をお薬の力で根絶やしにして、再発のリスクを下げ、生存率を上げるという意味があります。いずれも大事な治療で、個人の病状に合わせて組み合わせて行われます。

 以上、BC Tubeでした。

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